50代で子育て専業主夫になった私の日記

50代で初めての長男が誕生し、何もかもが180度変わりました。そんな初めての世界に感じたことを気分転換も兼ねて日々綴っているブログです。

2021年5月16日厚生労働省実態調査公表「子ども体罰親の3割超」を深読みしてみた

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 昨日は、朝から雨がまだ結構降っていたのですが、久しぶりに裏の川の掃除をして、気分もさっぱりしたボイジャーです。

 

川掃除は、まだ半分、残っているのですが、運動不足解消も兼ねてのおひとり様ボランティアなので、天気の良い日にぼちぼちやります。((^▽^)/)

 

5日前の話なんですが、新聞を広げると、2面目に結構大きく‟子ども体罰親の3割超”と載っていました。

 

我が家の新聞は、地方紙ですが、日経新聞やその他、多くの新聞にも載っていたようです。

 

私も息子の子育てで体罰については、いろいろ考えることが多かったので、この記事をきっかけに子どもの体罰について再度考えたいと思います。

この記事が伝えたいことは? 

この記事が伝えたいことは、‟体罰を禁止した改正児童福祉法などの浸透不足”とし、この調査で子育てのストレスと体罰に関連性が見られるということ。

 

そして、この状況を解消するため、厚生労働省は、保護者が息抜きのための具体的な施策を考え、同法の改正案等を検討したいとした。

この新聞記事の元データを見てみる

 この新聞記事は、国が令和元年6月に成立し、翌年4月に施行された「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」及び、その内容をわかりやすく説明している「体罰等によらない子育てのために~みんなで育児を支える社会に~」の認知度、内容の理解度の実態調査を、厚生労働省が令和2年11月~12月に行った結果について書かれています。

 

詳細にご興味のある方は、以下に報告書リンクを貼っておきます。

令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業

体罰によらない子育ての推進に向けた実態把握に関する調査

事業報告書

 

今回のこの調査方法は、インターネットを使ったアンケート方式で、調査母数は、15歳から79歳までの男女5000人18以下の子どもを教育する者5000人で、全体の調査母数は、どちらにも該当する人が1177人いたことから8823人。

 

世間では、「体罰禁止法」とか呼ばれているこの法律なんですが、今回の調査でこの法律の内容まで知っていると答えた人は20.2%、聞いたことはあるが、詳しい内容は知らない60.2%知らない19.6%でした。

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※グラフの数値データは、「体罰によらない子育ての推進に向けた実態把握に関する調査事業報告書」p11の表4より引用

 

テレビやネットなどで、学校でも家でも体罰は、やったらだめ!という法律ができたらしいけど、よく知らないと言った感じでしょうか。

 

そして、「子どもに体罰を与えることは、場合によっては必要だと思うか」という質問に対しては、全体の40.2%肯定的な認識でした。

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※グラフの数値データは、「体罰によらない子育ての推進に向けた実態把握に関する調査事業報告書」p13の表8より引用

 このデータを各世代ごとに見ると、1989年に第44回国連総会にて「児童の権利に関する条約」が採択されたのを受け、日本では、この条約を1994年に批准したことが、30代から体罰は好ましくないという意見が増加してきた一因だと思います。

 

ちなみに「批准」とは、簡単に言うと、国が国際間の取り決め(条約)を、自分の所の国でもやります!と世界に公言して、取り組むという感じです。(^▽^)/

 

子どもの権利関連では、この条約批准よりさかのぼること43年前の日本が敗戦復帰した1951年に、既に「児童憲章」が制定され、その条文項目の10番目に”すべての児童は、虐待、酷使、放任その他不適当な取扱から守られる。あやまちをおかした児童は、適切に保護指導される。”とあります。

引用元:文部科学省ホームページ:児童憲章 

 

しかしながら、この児童憲章が制定された当時は、朝鮮戦争が勃発し、日本には、多くの米軍駐留があり、R&R(Rest and Recuperation:休養と回復)計画と呼ばれるものが実施されていました。

 

要するに、朝鮮戦争で疲れた兵士の慰問観光を日本の各地に用意するというものでした。

 

福岡の小倉、横浜、大阪(後に奈良と神戸に移転)にセンターが建てられ、売買春の蔓延、歓楽街の発展、教育環境の悪化等が告発される状況下で、児童憲章は、実質上、有名無実化となっていたことから、「児童の権利に関する条約」批准時の時のような影響は、ほとんど見られなかったようです。

参考文献:<銃後>のツーリズム -占領期日本の米軍保養地とR&R計画ー

阿部純一郎、年報社会学論集31号(2018)60-71頁

 

続いて、「過去6か月の体罰行使の頻度」を見てみると全体の33.5%の養育者が体罰行使が見られました。

 

この数値が新聞報道で大きく取り上げられていたんですね。

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 ※グラフの数値データは、「体罰によらない子育ての推進に向けた実態把握に関する調査事業報告書」p22の表16より引用

 

子どもの養育年齢層を見てみると、3歳以上6歳未満、いわゆる幼稚園や保育園に通っているであろう年代の層が一番、体罰が多く見られましたね。

 

うちの息子もこの層です。

 

口も達者になってきて、自我も芽生えてきてるので、言うことも聞かないこともしばしばのこの時期、予想するに易い結果と言えば怒られるかもわかりませんが、それでもちょっと納得してしまう結果と感じました。

 

そして、最後にちょっと気になる体罰をしてしまった状況なんですが、そのデータも出ていましたので紹介します。

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   引用元:「体罰によらない子育ての推進に向けた実態把握に関する調査事業報告書」p17の図6

 

どの理由も、1年前までの我が家を振り返って‟あるある”でした。

そもそも今、なぜ家庭でも体罰禁止になったのか?2つの流れ

2020年になぜ国は、家庭内教育にまで口を出し、法律で体罰を禁止としたのか?

 

これは、あくまで個人的見解ですが、2つの異なる流れからだと考えます。

 

一つは、国際的に子どもの人権尊重の機運が高まり、国連で1990年に「子どもの権利条約」が発行されたことを受け、先進国である日本も1994年に批准したという行政的な流れです。

 

そして、もう一つは、医療技術の目覚ましい進歩により、子どもの脳科学分野において臨床研究の結果、体罰は、肉体的なもののみではなく、精神的なものについても子どもの脳の発達に良くない影響を及ぼすことが明らかになったという流れです。

www.netikikata.com

 

今、体罰は、科学的に医療分野で子どもの脳の発達に良くないことが明らかにされ、子どもが日々生活する社会の中で法的スタンダードとしてもそのような行為は、排除されるべきであるという時代になったということではないでしょうか。

 

体罰がなかなか減らないメカニズムを覗く

児童相談所における児童虐待の相談件数は、以下のグラフを見ても一目瞭然、誰が見ても児童虐待増加の一途をたどっていると感じると思います。

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引用元:京都女子大学大学院発達研究学研究科博士後期課程研究紀要「発達教育学研究」⓮2020、「児童虐待の現状と支援」谷川至孝、P16


でも、この内訳をみると

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引用元:京都女子大学大学院発達研究学研究科博士後期課程研究紀要「発達教育学研究」⓮2020、「児童虐待の現状と支援」谷川至孝、P17

 

2008年からのデータではありますが、身体的虐待やネグレクトに比べて心理的虐待増加が際立っています。

 

心理的虐待とは、厚生労働省の定義によると、‟言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)、きょうだいに虐待行為を行う など”となっています。

 

心理的虐待の増加は、日常の家事育児に加え、学校行事や地域行事、冠婚葬祭に共働きの場合、仕事もこなさないといけない超多忙な社会に生活している養育者の余裕がないことによるストレスが大きな要因だと思います。

 

その裏付けの一つとして、今回の調査で

体罰を与えた後、「しなければよかった」と後悔した経験があると回答した養育者が88.7%にのぼる

引用元:「体罰によらない子育ての推進に向けた実態把握に関する調査事業報告書」p29

という状況から、多くの体罰履行は、養育者自身余裕があれば体罰は避けられたのではないかと推察します。

まとめ

昨年4月に「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」が施行されるまでは、体罰や児童虐待といった行為は、養育者個人の問題として考えられることが多かったように思います。

 

しかし、今一番増加している児童虐待が、心理的虐待であり、その虐待を行った養育者の大半は、その行為を後悔していることから、その隠れた根本的原因は、余裕のない生活に陥りやすい社会構造にあるのではないでしょうか。

 

もし、そうだとすれば児童虐待は、特異的なものではなく、今の社会に生きている我々の誰にでも発現する可能性持っているものだと考えます。

 

最初は、辛辣な言葉に始まり、次第に手がでてしまい、気が付いたら虐待にまでなっていた。という流れにはまってしまって、後悔ということにならないためにも、子育ての援助者を平素から考え、心の余裕が持てる養育者自身の健康的な生活を常に意識することが大切だと思います。

 

今日、コロナ禍の中、一生懸命営業しても立ち行かないラーメン屋さんの貼り紙がネットのトップニュースにでていたのを見ました。

 

一生懸命営業を続けても緊急事態宣言下では、お客さんの入りは激減し、行政の支援金もなかなか降りず、自分の持ち物で売れるめぼしいものはすべて売りつくして、万策尽きそうな状況のラーメン屋さんが、店の表にお客さんに対して、「もう限界です。助けてください」と悲痛な貼り紙をしたところ、Twitterで話題になり、15万件のいいねがつけられ、お客さんの入りも盛況になったとか。

 

このように今の世の中、一生懸命真面目にやって、万策尽き、誰かに助け求めれば、わかってくれる人多いんだなぁ、世の中まだまだ捨てたもんじゃないと感じ入っていました。

 

子育ても、一生懸命やっていて、限界になりそうな時、自ら声を上げれば、ママ友、ご近所さん、幼稚園の先生、役所の子育て支援課等々、必ず助け船は見つかると思います。

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イメージ出典元:写真AC

 

我が家でも、毎日、家事・子育てをしていて、いっぱいいっぱいになりそうな時は、妻の実家ヘルプしています。

 

本当に、ありがたいと思っています。感謝しかないです。

 

子育ては、一生懸命は大事ですが、やっぱり壁にぶち当たったり、精神的にも体力的にもいっぱいいっぱいの時は、頼るということは恥ずかしいことでも何でもないと思います。

 

そして、一人だけでがんばらずに謙虚に頼り、多くの協力に感謝を忘れない子育てが普通になった時に、体罰や虐待は過去のものになるのだと思います。

 

参考文献:京都女子大学大学院発達研究学研究科博士後期課程研究紀要「発達教育学研究」⓮2020、「児童虐待の現状と支援」谷川至孝