最後のお弁当
先日は、年長さんの息子の卒園式でした。
そして、その1週間前が最後のお弁当の日。
この3年間、いったいいくつ作ったんだろう?
小学校からは、給食なので基本的には、おそらく最後になるであろう息子へのお弁当。
毎日、毎日、おかずに悩みながら、たまには冷凍食品を使った手抜き?もしながら、時には、冬の暗い寒い早朝のお弁当作りをあかぎれの手がつらくしんどく思ったことも。。。
それも、この日で私の人生でおそらく最後になると思うと、これまでいつもお弁当箱をピカピカでもって帰ってくれた息子の顔が浮かんでくる。
三年間、幼稚園を休んだ日は、妻の手術の日の1日だけ、お弁当は一度も残したことはない息子。
今から、歳のせいかちょっとウルウルしながら作った最後のお弁当はこれ。
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この3年間作ったお弁当、キャラ弁なんて気の利いたお弁当は私には作れません。
でも、最後くらいは、キャラ弁には程遠いと思いますが、「よくがんばったねニコニコ弁当」にしました。
息子よ、3年間つたない無骨なお弁当を1回も残さず、時には元気いっぱいの笑顔で“ぱぱ、きょうのおべんとうさいこう!✌”と言ってくれて、ほんとうれしいよ。
ありがとう。
卒園式
卒園式の日は、仕事を止めて子育て中には無縁だったスーツを久しぶりに着ました。
妻からの、”来賓の人みたいやね”との言葉に、いつもと変わらず不愛想な表情の私の内心は、ちょっとニヤニヤ。
前職在職中は、学校勤務をしていたので卒業式は、毎年のこと。
毎回、淡々としていたので、今回の卒園式も淡々という感じだと思っていました。
それが、卒園児の歌を聞いていて、胸のあたりがじわ~っときてしまい、目頭からもじわ~っと出てきてしまいました。
コロナ禍で、いつもうっとおしいなぁと思っていたマスクなんですが、この時ばかりは、マスクでごまかせた感じでマスク様様。
本当に都合のいい私です。
でも、「ありがとう 心をこめて」という卒園では、よく使われる曲なんですが、この歌詞を聞いてしまうと、今でも、もうだめです。
どうしても、この歌を聞いていると自分と息子のこの3年間がオーバーラップして、その時々が思い出されるんですよね。
息子の担任の先生も、本当に良い先生で、お世話になった先生から卒園する園児に向けてのスピーチの時に、声を詰まらせておられました。
最後に妻と担任の先生と一緒に記念撮影をさせていただきました。
子育ての原点は、自然が教えてくれた
息子が生まれての6年間、本当に大変でした。(大変なのは、現在進行形ですが(笑))
まぁ、どこのお母さんも“どの家も一緒ですよ”と言ってくれるので“うちだけじゃないんだ”と変な安堵感にホッとするんですが。。。
それでも、息子が遊んだ部屋の中は、一瞬でゴミ屋敷のようになり、毎回、一緒におかたずけの日々。
最近は、赤ちゃん返りか“ぱぱ、だっこして~”といって20kgの息子が私にぶら下がってくるは、ふざけてキャーキャー奇声を上げてたたいてくるはで、こっちの体力が持ちません。
このような光景を第三者から見ると、“子どもはみんなそんなもん”と言われることがほとんどなんですが、当事者の私としては、本当になんとかしてよ~と言いたい毎日なんです。
さすがに疲れMAXの時に、あの散らかし放題の部屋のかたずけの中にいると時々、自分の人生は、好きなこともできずにこれで終わるのか?という空気がふつふつと湧いてくるんです。
これは、子どもにとって良くないことということは十分わかっているつもりなんですが、疲労困憊状態になると、つい考えちゃうんですよね。
そんなある日、たまにとは言え、このような考えが湧いてくる私の頭を、ガツンと一発やられたような本に出合ったんです。
この本です。
「生き物の死にざま」と言う本で、静岡大学大学院農学研究科教授の稲垣栄洋氏が書かれました。
この本は、生き物の死にざまと言っていますが、タコとかミツバチとかゾウと言った自然界の生き物の生きざまがつづられた本だと思います。
個人的には、子育てをされる方には、お奨めの本です。
この本の中で、29種の生き物の生きざまが書かれているのですが、その中でも、私がガツンとやられた生き物は、「ハサミムシ」。
ハサミムシは、よく、少し大きめの石をひっくり返すと出会えることがある虫で、お尻に鋏を持った昆虫です。
このハサミムシも、石をひっくり返すとあわてて逃げ惑うものがいる一方で、逃げずにお尻の鋏を人間に向けて振り上げ、威嚇するものがいるそうです。
後者は、なぜ、そのような無謀な行動をとるのかと言うと、後者のハサミムシは、卵を傍らに持っているので、卵を守るためなんだそうです。
ハサミムシの子育ては、お母さんの仕事。
母は強しですね。
そして、ハサミムシは、卵がかえるまでの約40日間、長いものでは80日間以上のものもあるそうで、その間、飲まず食わずで、卵にカビが生えないようになめたり、卵を空気にあてるため向きを変えたりと丹念に世話をするそうです。
さらに、めでたく卵がかえってからは、かえった子どもが母親を食べ始めるのだそうで、母親は、群がる子どもたちを振り払うどころか、一番柔らかい腹の部分を子どもに差し出して、往生するのだそうです。
この行為を、人間に重ねるのはナンセンスと思われるかもわからないですが、人間の感性を持って、このハサミムシの一生を捉えることができてこそ、人間は「万物の霊長」と称されるに値する生き物だと私は思うんです。
そして、この記事中に著者は、こんなことを言っています。
厳しい自然界で、子どもを守り育てる「子育て」という行為は、子どもを守る強さを持つ生き物だけに許された、特権なのである。
引用元:稲垣栄洋「生き物の死にざま」草思社,p18
人間も広義では自然界の生物なので、お子さんのおられるあなたも、私も子どもを守る強さを持った、特権を享受された存在なのです。
このように思うと、崇高にさえ思えるハサミムシの生きざまには、潔さと溢れる子どもへの愛情を感じ、自分もこれに恥じない子育てを心掛けなければと思うようになりました。
これからも息子の子育ては、まだまだ3合目というところですが、これからもハサミムシに負けないように頑張ります。