2か月前の話になってしまいましたが、3月の初めに兵庫県ささやまの森公園でシイタケのホダ木作りを教えてもらいに行ってきました。
ホダ木に使う原木は、昨年初冬に山から伐採し冬越しさせたものを使います。
伐採の時の様子はこちらです。
シイタケの栽培用に使う母材になる木材(原木)にシイタケの菌を植えつけた状態もしくはシイタケが発生可能な状態の原木をホダ木と言います。
今回、このホダ木作りを兵庫県立ささやまの森公園で小2の息子と体験してきました。
1本のホダ木からは、木のお世話を失敗しなければ、だいたい1シーズン50個前後は採れることが期待できるとのことです。(^▽^)/
ただし、シイタケが生えるのは、通常はホダ木を作って1年目からだそうですが、
本格的に出るのは、2年目です。
シイタケが実際に生えている見本も用意していただけました。
作業自体は、一見簡単な単純作業のように感じたですが、いざ始めて見ると、やってはいけないことや長年シイタケづくりをされてきた先生方のご経験からうまくシイタケを生えさせるコツなど、とても奥が深い内容でした。
ちなみにホダ木を作るところからはちょっと・・・でも自家製のシイタケをつくってみたいなぁ~という方は、ホームセンターに行けば立派なホダ木が売っていますし、送料分だけ高くはつきますが、ネットでも売っています。
この教えていただいた内容を忠実に守って、ホダ木の保管場所が確保できれば誰でも自家製シイタケを作ることができますよ。(^▽^)/
ご興味のある方の参考になれば幸いです。
【シイタケのホダ木】について
シイタケのホダ木になる木の種類
シイタケは、名前の由来から、椎の木だけに生えるキノコと思われる方もおられるかも?
でも、現在では椎の木を含めどんぐりをつける木であれば栽培できることがわかっています。
現在では、シイタケのホダ木として最適な種類として、クヌギやナラを使っている所が多いです。
今回ホダ木にする木は、コナラです。
ちなみに、ナラと言う名前の木は、ありません。
ナラは、コナラとミズナラの総称なんです。
ミズナラは、寒冷を好む植物で、コナラは、里山によく見られる木です。
【シイタケ栽培の歴史】
日本においてシイタケの流通記録は、鎌倉時代から見られますが、現在のように栽培をして得られたものではなく、自然に生えているシイタケを採集したものとされています。
日本でのシイタケ栽培のはじまりは、小野村雄著「椎茸栽培の秘訣」(1936)に見られる江戸時代(寛文年間)豊後の国、佐伯藩で炭焼き業をしていた農民源兵衛が始まりとする源兵衛説や、鈴木伊兵衛著「実験椎茸栽培法」で取り上げている滝沢馬琴の「兎園小説」に記されている伊豆の漁師の子、斎藤重蔵が豊後の国、岡藩にシイタケ栽培を教えたとする斎藤重蔵説など諸説がありますが、いずれも確証に至っていません。
記録として明確なものは、江戸時代の寛政年間からで、その時期、椎茸栽培が諸藩で殖産事業として盛んになったことは、江戸時代の本草学者※1である佐藤成裕が著した最古の椎茸栽培専門書「温故斎五瑞篇」に記されています。
この頃の江戸幕府の財政は、太平の世の中にあって奢侈が蔓延し破綻寸前だったので、高値で取引されていたシイタケは絶好の財源産物として多くの藩で栽培されました。
しかしながら、江戸時代のシイタケ栽培は、どんぐりの木を伐採したものを数年放置し、その中からシイタケが自然に生えている部分を玉切りをする「長木法」や、原木に鉈で切れ目を入れて、浮遊しているシイタケの菌が付着しやすくする「鉈目式栽培法」といった自然発生頼みの方法でした。
現在のように原木に、シイタケの菌を直接埋め込む方法は、大正時代に始まったシイタケが生えたホダ木の木片を新しい原木に埋め込む「埋め木法」からです。
その後昭和時代に入り、シイタケの菌糸培養技術が進み、くさび型の木片にシイタケ菌を純粋培養した種菌を原木に植え付ける「純粋培養種菌接種法」が考案されました。
この方法で作られた種菌を、原木に斧で裂け目を作って打ち込むことで、椎茸を意図的に栽培し収穫できるようになりました。
さらに、その技術を基に研鑽が進み、原木にドリルで穴を開けて、あらかじめ円錐型や円柱型に改良された駒菌と呼ばれる種菌を木づちで原木に打ち込む方法が考えられ、活着率※2が大きく伸びました。
種菌の種類も、下表のとおり菌駒からオガ菌、形成菌へと研究開発されました。
【種菌の種類】
タイプ | 特徴 | 主な長所 | 主な短所 |
---|---|---|---|
駒菌 |
水分率約40%の木製チップにシイタケ菌糸を培養したもの。 直径は、8mm程度 |
作業が簡単で入手も容易。 虫による食害に強い。 |
収穫まで約2年を要す。 |
オガ菌 |
広葉樹のオガクズに栄養をプラスしてシイタケ菌糸を培養したもの。 現在のシイタケ栽培の全体の約9割がこのオガ菌を使用する菌床栽培 |
駒菌に比べて菌の活着や菌糸の伸びが良い。 原木の場合、おおよそ1年で収穫可能。 |
生産農家向けなので、入手は限定的。 植菌作業に手間がかかるので原木栽培では、あまり採用されない。 |
形成菌 |
オガ菌を駒型に形成し、上部に発泡スチロールの蓋を付けた駒菌とオガ菌のハイブリッド型。 直径は、12.7mm程度 |
木づち不要で作業が簡単。 駒菌に比べて菌の活着や菌糸の伸びが良い。 収穫まで約1年。 |
1駒当たりの価格が割高。 販売駒数最小単位が1万個程度と大きい。 |
※1.本草学者とは、中国古来の薬物学を習得した者。範囲は、動植物、鉱物に及ぶ。
※2.活着率とは、シイタケ栽培の場合、植菌した種駒全数に対して、十分に原木に菌糸が定着した種駒の割合を言う。
参考文献:長野県林業総合センター技術情報No132「原木シイタケ栽培の歴史と基礎知識」,2008/12,p4.
岡山大学大学院環境生命科学研究科 柏野泰章氏博士論文「菌床シイタケの大規模生産施設環境の最適化」,平成30年9月,p7.
ホダ木用原木の移動と選定
今回の原木の太さは、直径約10cm~15cmくらいのものです。
長さは、1m20cm程度。
長さは、原木の乾燥場所として窯に入れたため、その窯の内部の高さ制限で1m20cmとされたそうです。
原木の移動で絶対気を付けないといけないこと!
原木の移動では、絶対に切断面を地面にこすりつけてはいけません。
その理由は、切断面から害菌と呼ばれるシイタケ菌以外のキノコ菌やカビなどの雑菌を原木内に侵入させないためです。
もし、原木の切断面に土などが付着してしまったら、切断面から3、4cm程度を再切断します。
なぜ、原木は乾燥が必要なんですか?
販売されている駒菌チップの水分率は、だいたい40%くらいなので原木の中にそれ以上の水分があると、その水分がある部分からはシイタケの菌は、栄養を取ることが難しくなります。
切断したての生木の場合は、当然潤沢な水分を含んでいますので、そのまますぐには植菌できないのです。
もし、原木の乾燥が不十分で水分が残ったままの原木をホダ木にしてしまったら、生えてくるシイタケが小さく、ホダ木の寿命も短くなる傾向が見られます。
そのため原木の乾燥は、薪ストーブ用の薪のように芯までカラカラにする必要はないですが、4カ月くらいじめじめしたところを避けた場所で自然乾燥させます。
また、伐採して半年以上現場に放置しっぱなしの原木は、使わないほうが良いです。
理由は、長い間放置された伐採木材は、害菌と呼ばれるシイタケ菌を脅かす菌が繁殖してしまっている可能性が高く、また、害虫も付いていることが多いためです。
原木の適正な太さは?
原木の太さについて先生からのお話では、”シイタケは原木を栄養として成長するため、ホダ木にする原木は、細すぎると当然シイタケの収穫量が少なくなる”とのことで納得。(^▽^)/
それでは、太ければ太いほど良いのか?というと4つの理由からそうでもないとのことでした。
【シイタケのホダ木が太すぎると良くない理由4つ】
1.駒菌の使用量が多くなり、コストが高くつく。
2.ホダ木の中に十分菌糸がゆきわたるまで時間がかかるため、シイタケが生えるまで時間がかかる。
3.より多くの駒菌を打ち込んだからといって、確実に駒菌の打ち込み量に比例したシイタケが生えるとは限らない。
4.ホダ木が太くなると重たくなるので、作業性が良くなく、安全面でも危険。
確かに直径が15cmくらいの原木1本を、山中の伐採地から原木運搬車まで担いで移動した時は、結構、腰にきました。
おそらく、直径15㎝以上の原木の一人で持ち運びは、かなり危険だと思います。
シイタケの菌粒を原木に打ち込む
いよいよホダ木の作成に入ります。
まずは、駒菌を打ち込む場所にあらかじめ印を付けておきます。
打ち込む場所にマーキング
マ-キングは、切断面にします。
駒菌を打ち込むための穴を開ける列の場所に白で印を付けておきます。
まずは、直径10cmの方に4か所。
直径15cmの方は、6か所。
ちなみに実際穴を開ける場所は、コナラの表面は岩肌とか鬼肌と呼ばれているようにゴツゴツしてマーキングしづらいので、竹で作った穴あけ位置決め棒を使います。
ドリルで穴開け
駒菌を打ち込む穴あけ作業は、ドリルで穴開けを行う人と、穴あけ位置決め棒を原木にあてる人の2人作業で進めます。
竹で作った穴あけ位置決め棒を切断面に着けた白のマーキングの所におき、赤テープの横をドリルで穴あけしていきます。
開ける穴の間隔は、端から5cmの所にまず穴を開けて、そこから今回は広めで25cm間隔で開けていきます。
最初の5cmの穴に打ち込む駒菌は、ホダ木の切断面からの害菌や雑菌の侵入をブロックするためのものということです。
一列穴を開け終えたら次の列は、既に開けた穴の真横にならないように12.5cmずらして穴を開けていきます。
穴の深さは、2.5cmです。
駒菌の長さより若干深く穴あけします。
ドリルのビットは、シイタケ用のものを使っているのでこの長さで自動的に止まります。
こんなやつです。
シイタケ用のドリルビットの径は種類が色々あるので、使用した駒菌の大きさにあったものを選んでくださいね。
シイタケの駒菌を打ちむ
作業も大詰めになってきました!
原木は、汚さないようにブルーシートの上に運んで駒菌の打ち込みをしました。
今回使用した駒菌は、115という名前のシイタケで、低中温種で冬春型と言われています。
発生期間は、11月中旬から5月のはじめ頃までですが、気温条件で発生状態は、左右します。
【シイタケの種類】
一般にホームセンターなどで販売されている種類は、シイタケの収穫が寒い季節になる冬春型や春秋型です。
夏でも収穫できる高中温種は、周年型で収穫が通年可能です。栽培方法がハウス栽培や水につける浸水という特殊な方法で栽培されるため、種菌は専門業者からしか入手できません。
【駒菌打ち込み時の注意2点】
1.駒菌を打ち込む時には、不注意で駒菌を落としてしまったものは雑菌が付着している可能性が高いので使用しません。
2.打ち込む際は、駒菌上面を原木の表面と面一になるようにします。
シイタケのホダ木の管理
椎茸のホダ木を自宅に持ち帰り、自宅横の庭に保管しました。
風通しが良く、直射日光はほとんど入ってこない場所ということで、遮光ネットは不要と先生からアドバイスをいただきました。
雨が降れば、雨にあたる場所なので、このまましばらく静観します。
毎日の管理方法
毎日の管理は、ホダ木が乾燥しないようにすることが重要です。
青天の日が続いている時は、ホダ木が乾いていたら散水します。
うまくシイタケの菌糸が原木の中に活着してくれたら、ホダ木の切断面に白いシイタケの菌糸が現れるはずです。
これで向こう1年は、お世話としては、ホダ木が乾燥した時の水やりくらいで楽ちんです。
ホダ木に見慣れない苔?キノコ!が発生したらどうする?
キノコが生るまで、後はほとんどほったらかしで大丈夫と油断していたら、4月初めに白っぽい緑色のゼニゴケのようなものが増えてきました。
早速、先生に電話をし放置でも大丈夫か?聞きました。
回答は、”取ってください”とのこと。
ということで、丁寧に全部除去しました。
これでひとまず安心です。
と思ったら・・・
4月末になって、今度は、黒いキノコが生えてきました。
えっ、もうシイタケが生えてきた?
そんな訳はないと思い、ネットでちょっと調べてみたら、ゴムタケというキノコでした。
ゴムタケは、害菌でもおとなしい方と言うことみたいでしたが、またまた先生に電話をして対処について聞いてみました。
回答は、前回と同じく”取ってください”でした。
ということで、ゴムタケを除去する作業をしました。
ゴムタケと言うだけあって、ニッパーでつかんで引っ張っても結構根元がしっかり原木にくっ付いていて伸びます。
ちょっと取りにくいキノコです。
害菌のキノコを採る場合は、必ずナイロン袋を用意して、そこに入れてポイします。
採った害菌の1個でもが、ホダ木に付いていたり、ホダ木の下に落ちていたりすれば、そこからゴムタケが復活してくる可能性が大きいですからね。
30分かけてしっかり全部取り終わりました。
このゴムタケ、取った跡が真っ黒けになっているので、ホダ木が汚れるとネットに書いてあった通り、取った跡は真っ黒。
早い段階に取っておくことをお奨めします。(^▽^)/
念のために水分率も測ってみました。
まずは、太いほうの水分率を測定。
17.4%は、やや乾燥気味です。
そして、細い方を測ってみます。
34.7%!こちらは、結構いい感じの水分率です。
まとめ
最初は、椎茸栽培は、木に穴を開けて菌を打ってあとは放置で収穫を待つだけと思っていましたが、菌の扱いと言うのは思いのほかデリケートで気を付けることが多いなぁと思いました。
また、1つのホダ木に打ち込む駒菌の数は、菌を販売しているメーカーサイトなどでは、原木の直径✕2と書いてありましたが、今回打ち込んだ駒菌数は、それよりも2割ほど少なめでした。
先生の話では、家庭で食べる量としては、十分行けると思いますとお話しされていたので、来春からが楽しみです。