梅雨が明けたら一気に、夏日を通り越して猛暑日が続きますね。
こんな暑さにも負けない酷暑対策の一つとして、我が家の食事、は薬膳を多く取り入れています。
今回は、こんな酷暑でも、楽しみながら、じわっ~としっかり体が喜ぶ、薬膳を紹介したいと思います。
薬膳って、聞いたことはあるけれど難しいのでは?
薬膳と聞いて、高麗人参とか陳皮、芍薬というような漢方の生薬をイメージされる方も少なくないのではないでしょうか。
このような、皆さんもご存じの漢方の研究は、太古の昔から中国大陸で盛んでした。
私は、韓流の時代劇をよく見るのですが、漢方薬の煎じ薬が度々登場しますね。
この漢方の薬材になるものを、体系的にまとめた本も中国で古くから著され、今でも読まれている有名な本の一つに、前漢の末に著されたとされる『神農本草経』(しんのうほんぞうきょう)という本があります。
農とか草の字が本の名前に入っていたので、てっきり薬草の本かな?と思っていたのですが、植物以外の薬になる石や燕の糞、水銀なんてものも見られました。
この本には、365種類の薬物が記載されていて、これが漢方の考え方に基づいて上薬、中薬、下薬の三つのカテゴリーに分類されています。
あまり突っ込んだ話をしだすと、きりがないので、ざっくりさらっと本書の説明をお借りしてお話ししますと、
上薬は、120種の生薬があり、処方の中で君薬(病気を治す主要な生薬)となることができる。命を養う効果がある。毒はなく、多量に服しても、長期間服用しても人に害を及ぼすことはない。
引用元:森由雄『神農本草経解説』源草社
中薬は、120種の生薬があり、処方の中で臣薬(君薬の作用を補助する生薬)となることができる。人の健康を守り、無毒の時も有毒の時もあり斟酌して用いる。
引用元:森由雄『神農本草経解説』源草社
下薬は、125種の生薬があり、処方の中で佐使薬となることができる。病気を治療するのが主要な作用である。副作用が多いので、長期間服用してはいけない。
引用元:森由雄『神農本草経解説』源草社
ということで、実際に使う場合は、これらの組み合わせで使われます。
私は、今年に入ってから約半年、薬膳について勉強し、和漢薬膳師の認定資格を取りました。
本当は、今からでも薬科大に入りたかったのですが、子育てがある手前、時間と場所に融通が利く、薬膳を半年間勉強しました。
私は、薬草や生薬にも興味があったので、ちょっと突っ込んで勉強したくて、学んだことの客観的理解度を知るために、この資格を取ったのですが、薬膳は、このような小難しいことが必須ではありませんのでご安心を。(^▽^)/
薬膳は、毎日の食卓でもっと気楽にできます。
例えば、普通にキュウリの野菜サラダ とか
ナスの出汁でたいたん 等々・・・
塩分が高い食事には、塩分排出を促す作用が知られているキュウリやメロンなどウリ科の食材を同じ献立で採るようにする、酷暑で体がほてっている場合は、体を冷やすナスやスイカなどを採る等々、これも立派な薬膳なんです。
基本的に、旬の野菜は日本の四季の気候を考えて、その季節の体調を補う食材が多いです。
薬膳を作るうえで必要なこと
薬膳を作るためには、食材が持つ特性と味をある程度は、知っておく必要があります。
食材の特性
食材の特性は、基本的に熱・温・平・涼・寒の5つのカテゴリーに分けられます。
このカテゴリーは、字を見ていただければだいたい予想はつくと思いますが、熱と温は、体を温めて新陳代謝を活発にする食材グループで、その傾向の強弱によって、強いものを熱、穏やかなものを温に分けられます。
平は、温熱にも涼寒にも傾かないグループで、滋養・強壮の特性が多くみられるグループです。
そして、涼と寒は、体を冷やして、鎮痛や炎症を抑える特性がみられる食材グループで、これもその傾向の強弱によって、強いものを寒、穏やかなものを涼というふうに分けられます。
この5つのカテゴリーのうち、熱と温をまとめて、温熱性食品、平を平熱性食品、涼と寒をまとめて涼寒性食品と呼ばれたりします。
食材の味
料理を作る上で、味はやっぱり重要ですよね。
薬膳だから「良薬は口に苦し」では、食も進まないし、やっぱり食欲の満足感も得られないと思います。
そこで、薬膳では、味を五行説に当てはめ、酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味の五つの味、すなわち「五味」と呼ばれるカテゴリーを作り、食材をこのいずれかのカテゴリーに分類しています。
それぞれの味には、味ごとに機能促進が見込まれる体の部分が当てはめられています。
また、機能を高める相生と呼ばれる関係(太矢印)と抑制しあう作用の相剋と呼ばれる関係(細矢印)があります。
肝臓が疲れてるかも?と感じたら酸っぱい酢だけを採らず、酸と相剋になる甘の砂糖を加えて胃にも優しいマイルドな酢の物にして採るようにするといった具合です。
和漢薬膳師お奨めの酷暑に負けない快調ご飯
それでは、実際に酷暑に負けない快調メニューを3点ほど紹介したいと思います。
※妊娠中、授乳中、食物アレルギーの方は、お控えください。
薬膳カレー
まず最初は、薬膳カレーです。
【材料】()内は、(食材の持つ5つの性質・五味)を表す
・かぼちゃ(甘・温)100g
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
滋養強壮・疲労回復、活性酸素除去、血流改善、風邪予防、便秘予防
・じゃがいも(甘・平)中2個
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
じゃがいものビタミンCは熱損失が少なく、胃腸を保護する、風邪予防
・にんじん(甘・平)中1/2個
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
皮膚や粘膜の健康を保つ。がん予防、血流促進、胃の働きを高める
・玉ねぎ(辛・温)中1/2個
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
疲労回復、血栓予防、がん予防、動脈硬化予防、高血圧予防
・ブナシメジ(甘・平)適量
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
肝機能を強化する働きがあるオルニチンを豊富に含む
・豚ロース薄切り肉(酸・甘・鹹・平)150g
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
疲労回復、美肌効果、夏バテ防止、むくみ解消、血中コレステロール値低下
・枸杞子(クコの実)(甘・平)15粒
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
疲労、無気力、頭痛、目の疲労の回復、肝臓の働きを高める
・海松子(松の実)(甘・温)15粒
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
滋養強壮、便秘等
・はちみつ(甘・平)10g
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
疲労回復、整腸作用
・ヨーグルト(甘・酸・温)100g
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
疲労回復、整腸作用、免疫力アップ、老化防止、美肌
・ターメリック(辛・苦・寒)7g
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
健康に対する効果は、依然として明らかではないとの政府見解ですが、抗酸化力が高く、美肌効果も高いと言われています。
・クミン(辛・苦・寒)3g
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
食欲増進、消化促進
・コリアンダー(辛・温)5g
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
健胃、去痰、解毒の効果があり、血栓予防などにもなると言われています。
・水 お鍋に材料の表面から2cm程度まで入れる。
※ターメリック、クミン、コリアンダーは、味見しながらお好みの量でOK!
作り方は、普通のカレーの作り方と同じです。
キノコは過熱しすぎると栄養が流失してしまうので、短時間調理を心がけましょう。
今回は、息子にも食べやすいように甘めに作りました。
カレーは、煮込み料理なので、一見、炭水化物と脂質というイメージですが、実はビタミンCも結構採れるんです。
皆さんは、グツグツ煮込んでいるカレーの、どこにそんなに熱に弱いビタミンCがあると思いますか?
それは、じゃがいもの中なんです。
じゃがいもには、皮を剥いたじょうたいでリンゴの約5倍のビタミンCがあるんですが、このビタミンCは、じゃがいものデンプンに守られて、加熱してもビタミンCが壊れず残っているのです。
れんこんと鶏むね肉の梅煮
二品目は、れんこんと鶏むね肉の梅煮です。
酷暑で食が進む、さっぱりしてレンコンのシャキシャキ感も抜群の一品です!
レンコンは、自宅で食べるだけなので酢水に漬けずに、そのまま使いました。
(料理屋でれんこんを剥いて酢水に漬けるのは、色が黒ずまないため)
【材料】()内は、食材の持つ5つの性質・五味を表す
・銀耳(白きくらげ)(甘・平)4g
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
整腸作用、粘膜を潤す作用
・れんこん(甘・寒)中1節
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
粘膜を潤す作用、胃もたれや消化不良を改善、止血、消炎作用
・生しいたけ(甘・平)4個
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
疲労回復、不眠症改善、免疫力を高める
・こんにゃく(辛・苦・寒)1/2丁
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
便秘予防
・鳥むね肉(甘・温)100g
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
脂肪肝予防、髪やお肌の老化防止
・梅干し(酸・平)中1個
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
滋養強壮・疲労回復、活性酸素除去、血流改善、風邪予防、便秘予防
・サラダ油適量
・だし汁1/2カップ※白みそ、砂糖、みりん、酒各大さじ2
作り方は、銀耳は、水に2,3分漬けて戻しておきます。
人参は、角切り、生しいたけは、薄切り、鶏むね肉は、斜め削ぎ切り、こんにゃくは手で適当な大きさにちぎっておきます。
こんにゃくを手でちぎるのは、ちぎることによって、こんにゃくの表面積を増やすことになり、味を染ます面積も広くなるためです。
材料を切って、鶏むね肉を炒め、ある程度焼き色がついたら、こんにゃく、人参、生しいたけを入れて軽く炒めます。
次に、ちぎった梅干しと、だし汁を加えて沸騰したら、中火で15分ほど煮て、最後に銀耳を入れ、さっと煮ます。
今回、だし汁は、鰹と昆布ベースに、砂糖、みりん、酒で調整し、白みそを加えました。
お味噌は、お好みで変えてくださいね。
枸杞子入りフルーツティー
最後は、枸杞子入りフルーツティーです。
【材料】()内は、食材の持つ5つの性質・五味を表す
・枸杞子(クコの実)(甘・平)5粒
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
疲労、無気力、頭痛、目の疲労の回復、肝臓の働きを高める
・オレンジ(甘・酸・温)1/3個
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
疲労回復、風邪予防、がん予防、美肌作用、動脈硬化予防
・レモン(酸・平)1/3個
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
疲労、胃腸を整える、腹痛・胃痛・疲労回復
・りんご(甘・酸・平)1/3個
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
高血圧予防、抗酸化作用、疲労回復、便秘解消、老化防止
・バナナ(甘・寒)1/3個
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
免疫力向上、便秘解消、体内にこもった熱を除き、肺や腸を潤す
・紅茶(苦・甘・温)1包
☆☆☆期待できる効果☆☆☆
疲労、無気力、頭痛、目の疲労の回復、肝臓の働きを高める
・グラニュー糖大さじ2
・熱湯 4カップ
作り方は、材料を切って、ポットに入れ、枸杞子と紅茶、グラニュー糖を入れて熱湯を注ぎ、蓋をして2分程度蒸らしたら完成です。
紅茶は、個人的には、アールグレイが好みなので、アールグレイのティーパッグを使いました。
まとめ
薬膳は、本来、「証」と呼ばれるその人の状態を診て、過ぎた症状を抑え、不足しているものを補う食材を組み合わせて作られるものです。
しかし、忙しい日常生活において、そのような考え方で薬膳を作ることは、家族の人数分のオーダーメニューを作ることになるので、現実的ではないですよね。
そこで、まずは、枸杞子や海松子などの生薬は、最初は使わず、毎日の献立に馴染みが深い、玉ねぎ、じゃがいも、人参、きのこ、肉類、果物といったものから、薬膳の視点で献立を考えていくことが良いと思います。
私は、胃が慢性胃炎で血流が良くない場合が多いので、小松菜と豚バラ肉を出汁で炊いたんをよく作って食べます。
小松菜は、温の食品で、血の巡りを良くし、胃腸の働きを促す作用もあります。
そして、豚肉は、疲労回復の作用があり、100gでビタミンB1の1日の摂取量がまかなえます。
このように、ちょっと薬膳の思考を、毎日の食生活に取り入れるだけで、未病と呼ばれる、病気ではないないけれど、なんとなく体が重たいとか、食欲がないというような体調のバランスが崩れた状態をリカバリーできると思います。
そして、薬膳作成に慣れてきたところで、徐々に食材知識を広げていくことにより、献立のバリエーションも広がっていくと思います。
まずは、簡単な薬膳を、普段の馴染みのある食材から始められてはいかがでしょうか?