食用油は、私たちの生活の中で欠かせないものです。
4歳の息子も、焼き肉や唐揚げ、コロッケなど油料理は大好きで、毎日、油無しの献立を考えるのは一苦労します。
スーパーなどの食品売り場に食用油を買いに行くと、売り場の食用油棚には所狭しといろんな食用油が並んででいますよね。
同じ食用油でも、値段が倍ほど違ったり、「コレステロール0」とか「体に脂肪がつきにくい」など健康志向をうたったものなど、本当に色々あります。
これだけ多くの油があると、どれが一番良いの?とほんと迷ってしまいますよね。
そこで今回は、食用油について、その種類と特徴や、意外とプロの料理人でも誤解されていることが多い?揚げ物用の油脂の選定などをまとめ、子どものためのより良い油選びと使い方を考えてみました。
また、本内容は、学術論文や医師の著作、油の専門家からのコメントを基に、情報をまとめ、客観性に留意しました。
併せて、当ブログ筆者の主観的個人的見解は、筆者が過去に積水化学綜合研究所の当時のメディカル事業部にて生化学関連の研究助手を務めた時の基礎知識を踏まえて言及しています。
動機: 食用油脂の質で、体の質が決まる?
特に男の子は、串カツにとんかつ、コロッケなどなど“揚げ物が大好き”というお子様も多いのではないでしょうか?
そういう大人の私も、揚げ物が大の好物で、子どもができるまでは、体にあまり良くない組み合わせと思いつつも、ついついスーパーで揚げたてを買ってきて、夜の晩酌のお供にすることが1日のご褒美でした。
今回、私が食用油について調べようと思ったきっかけは、揚げ物を食べながらお酒を飲んだその夜に、体がかゆくなることが多いといったことからでした。
最初は、疲れている時のお酒が原因でかゆくなるのかなぁ? と思っていました。
それが、妻の妊娠を期に、専業主夫として妻の食べるものについて塩分、脂質に新鮮な食材、妊婦さんにNGな食材等、気を配ることはもちろんですが、私自身が家事疲れでダウンしないように、特に、今まであまり気にしなかった油脂の使い方と種類を変えて食事を採った結果、ある変化があったのです。
我が家では、揚げ物などで残った油は、油の透明度があまり落ちていない状態であれば、もったいないので使いまわしをしていたのですが、これを止め、すべて使い切りにしました。
油の種類も、キャノーラ油からこめ油、ごま油、オリーブ油に変えました。
変えた理由は、世間でもよく言われている遺伝子組み換え材料リスクやトランス脂肪酸リスクを考えたからです。
また、忙しくて時間が無い時には、腹持ちの良いスーパーで買ってきた揚げ物を食べていたのですが、これを止め、どうしても欲しくなった時のために、自宅で作って冷凍しておき、食べる直前に揚げて食べるようにしました。
すると、揚げ物を食べた後の私の夜のかゆみが出なくなったのです。
それでも、妻の妊娠が分かった時期から、子どもが1歳になるまでは、妻と子どもに万が一、何かあればすぐに車で病院に行けるようにと、お酒を飲むことを止めていたので、かゆみの原因は、やはりお酒だろうと思っていました。
それから、子どもも1歳を迎え、母子ともに元気なので、いざという時は妻も車の運転ができるので、お酒を解禁しました。
夕食時にお酒を飲みながら、大好きな揚げ物を食べる機会が増えてしまったのですが、以前のように夜中にかゆみが出るようなことはありませんでした。
ただし、例外があって自宅の冷凍してある揚げ物が切れた時に、ついついスーパーの総菜で揚げ物を買い、それをあてに夕食でお酒をいただいた時には、あのかゆみが夜中に出てきたのです。
これは、ひょっとしてかゆみの原因は、「油脂」のせい? と疑い始め、いつも利用するスーパーで作っている総菜コロッケと肉屋の揚げ物コーナーで揚げてもらったコロッケ、自宅で作ったコロッケを日を変えて食べてみました。
ちなみに、コロッケを購入したスーパーと肉屋の店員さんに、揚げ物に使っている油種を尋ねたところ、サラダ油で揚げているということでした。
結果は、この表のとおりです。
お酒を飲んだ時と飲まなかった時それぞれに、自宅で作った揚げ物を一緒に食べた場合と買ってきた揚げ物を一緒に食べた場合の組み合わせ時のかゆみ症状を下表に示します。
自宅で作った揚げ物 | 買ってきた揚げ物 | |
---|---|---|
お酒有り | かゆみの症状は無し | かゆみ症状が出ることが多い |
お酒なし | かゆみの症状は無し | かゆみ症状が出る場合がある |
1日おきにお酒を飲んだ時と飲まない時に分け、週3回夕食で2カ月間試してみました。
注意)この一覧表の症状は、あくまでも私個人の症状であり、すべての人に適用される症状ではありません。
やはり、夜のかゆみの元凶は、どうやら食用油脂にあるような感じがして、お酒がかゆみをさらにパワーアップさせているように思いました。
ということは、子どもにも何らかの影響があるのではないか? とちょっと心配になり、詳しく油脂のことについて調べてみようと思いました。
皆さんは、「あぶら」は「油」と「脂」の二種類があることをご存知でしょうか?
どちらも食用として用いられています。
この違いは、漢字の意味における区別ですが、理屈では、常温※1での形態で区別しています。
常温で固体の場合は「脂」と言い、液体の場合は「油」と言っています。
「油」は、植物由来のものが多く、「脂」は、動物由来のものが多いのが特徴です。
また、それぞれが構成している脂肪酸の比率も大きく異なります。
JAS⇒特に定義していません。
厚生労働省⇒「常温保存可能品に関する運用上の注意」の中で「常温とは、外気温を超えない温度」
日本薬局方⇒15℃~25℃と定義
代表的な油脂の種類と特徴
食用油脂は、脂肪酸と呼ばれる成分によって構成されています。
ちょっと専門的になりますが、脂肪酸は、分子構造における炭素間の二重結合の有無で二種類に分かれ、有るものを不飽和脂肪酸、無いものを飽和脂肪酸と呼ばれています。
さらに、不飽和脂肪酸は、炭素間の二重結合の数で、結合が1つだけのものを一価不飽和脂肪酸といい、結合が2つ以上のものを多価不飽和脂肪酸と言います。
脂肪酸の種類 | 主な特徴 | ||
---|---|---|---|
飽和脂肪酸 |
・常温で固体 ・代表的な飽和脂肪酸は、ステアリン酸、パルチミン酸、 ラウリン酸、ミリスチン酸※2がある。 |
||
不飽和脂肪酸 | 一価不飽和脂肪酸 | オメガ9系脂肪酸 |
・常温で液体 |
多価不飽和脂肪酸 | オメガ6系脂肪酸 |
・常温で液体 といわれている。 |
|
オメガ3系脂肪酸 |
・常温で液体 ・必須脂肪酸と言われ、体内で作ることができない。 ・代表的なオメガ3系脂肪酸は、α-リノレン酸がある。 |
※2「United States Department of Agriculture Agricultural Research Service
National Nutrient Database for Standard Reference Legacy Release」のFood data参照
飽和脂肪酸は、
エネルギーとして使われるが、摂り過ぎると体内で固まり、体脂肪になる
1)
特徴があり、一価不飽和脂肪酸(ω9)は、
炭水化物と共に過剰に摂取すると、体内に体脂肪として蓄積される
2)
特徴が見られることから、これらの油は、過剰な摂取になると太りやすい傾向のある油です。
その一方で、多価不飽和脂肪酸は、
余ったものはエネルギーなどに変換され、体内に蓄積されにくい
3)
ため太りにくい傾向がみられる油です。
(引用元:1),2),3) 守口徹,『カラダが変わる!油のルール』,朝日新聞出版,2016年,p.19)
食用油脂は、どのようにして作られる?
日本において、食用油脂は、室町時代に遡り、「てんぷら」などの食べ物が海外から入ってきたことにより使われだしたのが始まりと言われています。
江戸時代の油では、菜種や綿実から絞られ、下図のような採油方法で油を造っていました。
最も、用途的には行灯や提灯に使う灯火用が多くを占め、食用としての生産は、わずかだったようです。
出典:『製油録』(国立国会図書館デジタルコレクション インターネット公開 保護期間満了)
図の左上では、菜種や綿実をてこの原理で、木材の先に取り付けられた石で砕いています。
砕かれた菜種や綿実は、図の右下に描かれている竈で蒸され、その後、図の真ん中にある当時の油絞り機で絞られます。
この時代は、今のように圧搾に耐えられるような強靭なネジはなかったので、大きな木の上にくさびを打ち込むことにより、その下にある菜種や綿実を圧搾していました。
図では釣鐘を打つような感じで、吊り下げられた木でくさびを打っていますね。
圧搾された菜種や綿実は、大きな甕に不純物と油が自然に分離するまで寝かされます。
また、抽出・精製された江戸時代の油の採油率は、15%から20%程度でした。
このような、油の製造法において、第二次世界大戦終戦頃までは、油製造の各工程の機械化が進み、油の酸化を防ぐための工程は増えたものの、油の製造法の基本的な流れとしては、あまり変わっていませんでした。
しかし、第二次世界大戦後からは、日本人の食生活は、欧米食が進み、ポテトチップスなどのスナック菓子や即席めんに代表されるように、食用油脂の大量消費の時代に入りました。
この変化により、食用油脂の作り方も、従来の圧搾法と呼ばれる「原料に圧力をかけて絞り出す方法」だけでは、搾りかすに油が20%程度で残り採油率が良くないため、より効率的な油製造方法として、抽出法と呼ばれる「溶剤を原料に加えて溶けた油を採り、溶剤は回収する方法」が新たに導入されました。
抽出法により、搾りかすに残る油は、わずか1%~2%程度になります。
したがって、現在の油製造では、圧搾法と抽出法、及び圧搾法で油を搾りだした後、さらに抽出法で油を抽出する圧抽法のいづれかが導入されています。
みんなの疑問?油脂についてこれが知りたい!
ここからは、油脂について多くの人が疑問に感じていることを取り上げてみました。
酸化油は、体に良くないって本当?
酸化は、代表的なものとして物質が酸素と反応して生まれる状態がありますね。
身近な所では、鉄が錆びる、肌の老化というのも酸化が関係しています。
空気中で生活する限り、酸化は我々にとって宿命ともいえる現象です。
油脂も同様に、空気と触れた瞬間、酸素と反応して酸化が始まります。
このように、空気中に放置して酸素と反応して酸化することを、「自動酸化」※3と言います。
これに対して、揚げ物・炒め物のように油脂を加熱することにより酸化することを「熱酸化」と言います。
※3 自動酸化は、酸素との反応の他に、紫外線を浴びることによっても進行します。
公益社団法人日本食品衛生協会食品衛生研究所によると
酸素、温度、光、金属、水分等の外的要因により加水分解、酸化、分解、重合などの変敗経路をたどりカルボニル化合物等が生成します。生成物により食品に異臭を生じ、風味、色調等を変化させ栄養成分が分解され、味覚への影響だけでなく人体に有害な作用を及ぼします。
( 引用元:公益社団法人日本食品衛生協会食品衛生研究所ホームページ、
http://www.n-shokuei.jp/houjin/laboratory/item/rikagaku_sanka.html)
とされています。
解りやすく言うと、油は、酸素に触れる、温度が上がる、光に当たる、銅などの油と反応する特定金属に触れるなどの状態が続くことにより、変敗と言われる状態に至ると、油の質が変わって毒性を持つ化合物を生み出し、その変質した油を食べると“美味しくない!”だけではなく、体にも良くないと言うことです。
油の酸化は、油成分の不飽和脂肪酸が酸素を取り込むことで、過酸化物やフリーラジカルなどの有害物質が発生することに繋がり、このことは、既に多くの研究結果で知られているところです。
また、フリーラジカルは疾病、発がん、老化の原因になることが知られている。
ということからも、やはり、酸化した油は、体には良くないようですね。
(引用元:藤谷健,『あぶら(油脂)の話』,1996,裳華房,p.65)
酸化の進行度は、酸価(AV)と呼ばれる数値と過酸化物価(PV又はPOV)と呼ばれる数値で表されることが多いです。
どちらも、数値が大きいほど酸化が進んでいる状態を表します。
油脂の酸化状態は酸価、過酸化物価という値で表すことが一般的です。
引用元:三浦健史,『油脂の劣化』,あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センター 平成30年3月16日発行,p4
【過去にあった酸化油の事故のはなし】
実際に、酸化油が原因で事件にまで発展した事例が過去にはありました。
画像:いらすとや
即席めん類による食中毒事件(1964年6月)
6月22日から8月26日にかけて大阪府・京都府・岐阜県・静岡県・長野県の各府県で発生した食中毒事件では、日清食品高槻工場で製造された即席焼きそばを食べた69名が症状を訴えた。
( 引用元:内閣府食品安全委員会事務局 平成17年度食品安全確保総合調査報告書
国内で発生した事故・事例を対象として食品安全に係る情報の収集と提供に関する
調査報告書 国内の食品に係る化学物質による事件・事故の事例調査
第3編 その他の事件・事故 第1章 即席めん類による食中毒事件 1.事件の概要)
この事件の原因は、製造工程内において麺を揚げる油に、酸価安定性の低いラードを使用していたため、過酸化物価にして400~600meg/kgにまで油脂が酸敗し、揚げ油の酸価が5.0になるまで使用していたこと等によるものとされています。
加えて、このようにして製造された商品の小売店での管理において、商品の「先入れ先出し」が実施されていなかったため、夏期の高温・多湿といった酸敗が進行しやすい環境下で長時間保管されたままの状態のものが見られたことや、いくつかの小売店では、商品の陳列台が太陽の直射日光(紫外線)に長時間さらされている状態のもとで即席めんを陳列、販売していたという状況がさらなる商品の品質悪化を進行させたと考えられています。
(参考:内閣府食品安全委員会事務局 平成17年度食品安全確保総合調査報告書
国内で発生した事故・事例を対象として食品安全に係る情報の収集と提供に関する
調査報告書 1-4.食中毒事件の原因)
この例では、製造過程で熱酸化がかなり進み、油が酸敗状態になったものを製品として出荷し、小売店で酷暑という環境下で自動酸化が追い打ちをかけてハイスピードで進んだ結果、食中毒に至ったと見られています。
このような経験を乗り越えて現在では、即席めんの品質規格基準として、「食品、添加物等の規格基準(昭和 34 年厚生省告示第 370 号)」に「即席めん類は、めんに含まれる油脂の酸価が3を超え、又は過酸化物価が 30を超えるものであってはならない。」と定められていますので製品としては、安心してインスタントラーメンを食べることができるのですね。
画像:いらすとや
その他にも、油脂の公的基準として、「菓子指導要領」や「弁当及びそうざいの衛生規範について」といったものが国から提示され、製品品質は、随時、農林水産省主導の下、JASや農林水産消費安全技術センター等で評価されています。
(昭和五二年一一月一六日)
(環食第二四八号)
(各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生省環境衛生局長通達)
菓子指導要領
第三 指導の事項
四 製品の管理
油脂で処理した菓子の管理については、次の事項に留意して指導を行うこと。
ア 菓子は、直射日光及び高温多湿を避けて保存すること、その他必要な管理を行い、次の(a)及び(b)に適合するものを販売するようにすること。
(a) 菓子は、その製品中に含まれる油脂の酸価が三を超え、かつ、過酸化物価が三〇を超えるものであつてはならない。
(b) 菓子は、その製品中に含まれる油脂の酸価が五を超え、又は過酸化物価が五〇を超えるものであつてはならない。
(参考:厚生省環境衛生局長通達 環食第二四八号)
昭和54年6月29日 環食第161号
各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長宛
厚生省環境衛生局食品衛生課長通知
「弁当及びそうざいの衛生規範について」
第5 食品等の取扱い>1 原材料>(4) 油脂の取扱い
① 油脂は、特に直射日光及び高温多湿を避けて保存すること。さらに、冷暗所に保存することが望ましい。
② 油脂は、ふたのある容器に入れて密閉する等空気との接触を少なくして保存すること。
③ 油脂(但し、再処理のものは除く。)は、次のア及びイに適合するものを原材料として使用すること。
ア 酸価 1以下(但し、ごま油は除く。)
イ 過酸化物価 10以下
(5) 油脂による揚げ処理
① 製品の特性に応じて適当な量の油脂を用い、適正な温度及び時間をもって揚げ処理を行い、不必要な加熱を避けること。特に、200度以上での揚げ処理は行わないことが望ましい。
② 揚げ処理においては、油脂の揚げかす等の浮遊物や沈澱物を取り除きながら、適当な油脂の量の7%以上が減った場合には、その分の油脂を新たに補充すること。
③ 揚げ処理中の油脂が、発煙、いわゆるカニ泡、粘性等の状態から判断して、次のア~ウに該当するにいたり、明らかに劣化が認められる場合には、その全てを新しい油脂と交換すること。
ア 発煙点が170度未満となったもの
イ 酸価が2.5を超えたもの
ウ カルボニル価が50を超えたもの
(参考:厚生省環境衛生局食品衛生課長通知 環食第161号)
しかし油脂は、油脂そのものの特質に加え、使い方、保管の仕方により品質が大きく変わってきます。
また、食中毒のように急性な症状の他にも、20年、30年と生活習慣的に少量でも劣化した質の良くない油を採り続けると、認知症、がんなどといった生死に関わる疾病に繋がる研究報告4)5)もされています。
4)2014年、医学博士脳科学専門医 山崎哲盛、「そのサラダ油が脳と体を壊している」トランス脂肪酸の危険性に加え、サラダ油を作る過程において、灯油の原料であるヘキサンを使用していることによる残留ヘキサンの影響及び神経細胞を破壊する「ヒドロキシノネナール」の発生を説明。
5)2017年12月、テンプル大学ドメニコ・プラティコ教授、「日本版Newsweek」マウスによる研究結果より「キャノーラ油で認知症が悪化する」の記事でキャノーラ油のリスク性を公表。
このようなリスクをできるだけ回避するために、油脂の酸化についての知識は持っておくことをお奨めします。
油の原材料が遺伝子組み換えのものでも大丈夫?
画像:いらすとや
遺伝子組み換え食品の耕作において、作物を食べる害虫駆除のため大量農薬散布の種類や量が年々パワーアップしています。
遺伝子組み換え食品の耕作で一番のメリットは、害虫駆除のための農薬を浴びても枯れずに生育するというところにあるのですが、害虫も農薬に対して耐性が付き、従来の農薬では害虫駆除ができないので、新たな農薬が投入されるといういたちごっこが、数年に1回行われています。
この年々パワーアップする農薬入りの作物を食べても問題が無いのか?
この点が消費者目線から疑問視されている大きな理由の一つなのですね。
正直な所、遺伝子組み換え食品を摂取後、将来にわたって絶対に安全という因果関係を証明ことは、現時点ではできていません。
また、油脂については、遺伝子組み換えである表示はありません。
そのため、遺伝子組み換え食品が、使用されているかどうかは製造メーカーからの情報提供が無い限りわからないので、このリスクを低くするためには、油脂の原材料において、遺伝子組み換え技術の商品化ができていないものを選ぶしかありません。
しかしながら、遺伝子組み換え食品は、今や外食やスーパーの総菜、冷凍食品、多くの発泡酒、インスタント商品、精肉においても家畜の飼料に至るまで、すべての食品について普通に使用されているといっても過言ではないと思います。
しかも、遺伝子組み換え食品であることの商品表示については、2019年現時点の食品表示法においては、豆、トウモロコシ、バレイショ、アルファルファ、菜種、綿実、てんさい、パパイヤ、以上8つの農作物及びこれらを使った加工食品群33についてのみ実施され、その他の食品については、「遺伝子組み換え食品」という表示はありません。
このような社会の中で生活していかなければならない以上、油脂以外でもこのリスクの軽減を考える必要があるのではないでしょうか。
スーパーで売っている同じ種類のオリーブ油でも値段に開きがあるのはなぜ?
輸入品が多いオリーブオイルの値段は、安いものでは300円/200g台からありますね。
一方、高いものは1000円/200g前後のものあります。
他の種類の油についても、結構値段に幅があることが多いように思います。
どれを買おうか? と油の陳列棚の前でしばらく思案し、子どものためには、やはり価格が一番高いものが品質が最上級に映ってしまうといったことはないでしょうか?
素人目には、「安い=品質が低い」というようなイメージがあるかもしれませんが、本当の所はどうなのか? 京都で江戸時代から続く山中油店で聞いてみました。
油の値段の差について教えていただきたいのですがよろしいでしょうか?
はい。
スーパーなどで売られている油の値段は、同じ種類で同容量のものでも安いものから高いものまで、非常に幅があると思うのですが、このような幅があるのは何か理由があるのでしょうか?
この価格の幅は、手間がかかるかかっていないかの差です。油の圧搾方法の違いで時間をかけて低い温度で圧搾するコールドプレスの商品価格は、工場で普通に圧搾される商品より手間暇がかかる分だけ高価ですし、大手企業が種子などの油の原料を船便で大量に輸入し、国内工場で油を大量に製造・瓶詰しているものは、コスパが良く消費者に優しい価格になっています。
油の商品の価格差は、一時的には小売店の都合による値段設定もありますし、企業努力の反映という側面も当然あると思いますが、値段に倍ほどの開きがある理由は、やはり手間暇がかかっているものが高いということのようですね。
さらに、“油の上級品というものは、風味で決まる”とも言われていました。
手間暇がかかっている油は風味が良いということだそうです。
オリーブ油を例に取ると、熟練の有資格者が専用のグラスで厳しい油の格付け試験を行うのだそうです。
その専用グラスは、油の風味だけに集中できるように故意にグラスに色が施されています。
これは、油の色という視覚情報が、油本来の風味評価に影響が及ばないようにする工夫なのです。
(山中油店にて撮影・web投稿許可済み)
サラダ油が体に良くないというのは本当?
さらに、山中油店さんに市販本でも出ているサラダ油の危険性について聞いてみました。
お医者さんがサラダ油の有害性について書かれた市販本7)で、サラダ油が危険と言われているものがあります。
その理由は2つあり、一つは、抽出法を用いたサラダ油は、製造工程において200℃以上の高温処理が行われ、その際に人体に有害なヒドロキシノネナールという神経毒になる物質が油中に発生しているというもの。
もう一つは、抽出法では、人体に有毒なノルマルヘキサンという有機溶剤を一旦、油の原材料に混ぜて油を抽出し、抽出した油を200℃以上に真空加熱して再びノルマルヘキサンを回収するという工程の際、どうしても回収しきれない残留ノルマルヘキサンが生じてしまうという話があるのですが、本当にサラダ油は、長期的に見て危険なのでしょうか?
7) 医学博士脳科学専門医 山崎哲盛、『そのサラダ油が脳と体を壊している』,2014,ダイナミックセラーズ出版
サラダ油に関して油業界でそのような有害例を聞いたことがありませんね。
よくわかりました。ありがとうございました。
個人的には、サラダ油は、圧抽法で製造されたJAS規格品のものもあるので、その危険性は理論的には可能性はあるものの、どれだけの期間にどれだけの頻度・量でサラダ油を摂取すれば好ましくない影響が発生するのか? 現時点では実例が無いだけにグレーゾーンだと感じました。
トランス脂肪酸は、体に良くない!は本当?
トランス脂肪酸について、WHOは以下の見解を採っています。
Eliminating trans fats is key to protecting health and saving lives: WHO estimates that every year, trans fat intake leads to more than 500,000 deaths of people from cardiovascular disease.
(引用元:News release、WHO plan to eliminate industrially-produced trans-fatty acids from global food supply、
)
わが国でも2012年に「食品に含まれるトランス脂肪酸食品健康影響評価」を内閣府が発表し、その中で、「Ⅺ.食品健康影響評価」の章の「3.疾病との関連」において
(5)アレルギー性疾患
トランス脂肪酸とアレルギー性疾患との関連について、ヨーロッパ 10 ヵ国のエコロジカル研究では、トランス脂肪酸摂取量の多い国ほど、子どもの喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー皮疹の発症率が高かった。
アトピー皮疹の子どもから得られた赤血球及び T-リンパ球の細胞膜中の総トランス脂肪酸比率は健常者と比較して、有意に高いことが報告されている。
ドイツの成人発症の喘息患者を対象としたケースコントロール研究において、マーガリン摂取量の多い群で喘息有病率が高いことが認められた。
と報告されています。
上記記事からもわかるように、トランス脂肪酸は、体に良くない脂肪酸であり、WHOにおいても、毎年、トランス脂肪の摂取が50万人以上の心血管疾患による死亡をもたらすと推定しています。
また、世界各国の対応は、アメリカ、カナダ、オーストリア、スイス、デンマーク、シンガポール、台湾、タイで食品中のトランス脂肪酸濃度等の規制処置が実施され、EU,イギリス、フランス、オーストラリア、ニュージーランドでも食品中のトランス脂肪酸濃度等の自主的な低減を推進しています。
(参考:農林水産省ホームページ,
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/overseas/overseas.html)
但し、ここで注意しなければいけない大事なことがあります!
トランス脂肪酸は、牛乳や牛肉など天然由来のものと、工業的に作られたものの2種類が存在するということです。
世界でトランス脂肪酸の摂取が体に良くないと言われているのは、水素添加等の工業的に作られたトランス脂肪酸を指しています。
同じトランス脂肪酸でも、牛乳や牛肉などに見られる天然由来のものは、逆に体に良いとされる研究報告も上がってきています。
その一例を以下に挙げます。
カルボキシル基側から数えて11番 目 に 二 重 結 合 が あ る ト ラ ン ス をt11-C18:1と表します。この脂肪酸は牛肉、牛乳など自然界に多くあります。これはバクセン酸と呼ばれるものですが、最近の研究ではこの脂肪酸の摂取の多い人は糖尿病、心疾患になりにくいと分かり、「身体によいトランス脂肪酸」ということになっています。
さらに、Kleberら〔2〕は炭素が16個あるトランス 脂 肪 酸、 パ ル ミ ト エ ラ イ ジ ン 酸(t9-C16:1)の血中濃度が多い人は心疾患になりにくい、さらに突然死しにくいというデータを発表し、これを「心臓を保護するトランス脂肪酸」と名付けています。
引用元:(独)農畜産業振興機構,「畜産の情報2016.7」,p57
このように、工業的に作られたトランス脂肪酸は、からだには、良くないようですね。
我が家でも、3歳の息子は、1日に500mlの牛乳を毎日飲んでいますし、パン食の場合は、パンはパン屋で焼いている無添加の食パン若しくは自宅で作ったパンをマーガリンではなくバターで食べています。
息子は、パン屋で焼いているメロンパンが大好きなのですが、砂糖も多いので、2週間に1度くらいにして特別なご褒美食にしてます。
お菓子にも、マーガリンと同様にトランス脂肪酸リスクの高いショートニングが使われているものが本当に多いので、できるだけ常備はしないようにしています。
こうした世界の動きの背景には、欧米食は脂肪たっぷりになることが多く、トランス脂肪酸の過剰摂取が半端じゃないので、このような各国が規制まで行っている状況がひとつあります。
その一方で、和食文化がある日本では海外ほど深刻な状況には陥っていないとの政府見解から、日本は、特にトランス脂肪酸濃度等の規制は、特に実施していません。
和食は、やっぱり体に優しいみたいですね。
但し、国は、食生活において脂肪摂取が高い食事が多い人には、トランス脂肪酸のリスクについて注意喚起を行っています。
脂っこいもの大好きの私も含めてですが、洋食中心の方は、ご注意を!
子どものための食用油選び!
それでは、これまでの情報を踏まえ実際に子どものための食用油を選んでいきましょう。
子どものための食用油の選定基準は?
子どもの食用油に関する臨床データが極めて少ないため、子どもにとっての明確な基準というものは、残念ながら見当たらないようです。
しかしながら、厚生労働省が、日本人の食事摂取基準を5年更新で提示し、現在は、2015年版が適用されています。
1日当たりの私たちに必要な油脂の種類と量ってご存知ですか?
脂質の役割と言えば、エネルギー源と言う感じがしますが、その他にも、細胞膜や核膜の成分、ホルモン生成、皮下脂肪として、臓器を保護したり、体を寒冷から守る働き、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)の吸収を促進する等の働きになくてはならないものです。
その重要な役割を果たす、脂質の1日の摂取基準量は、炭水化物やたんぱく質といった他の栄養素の取得状態や、1日の身体活動レベルや体重、身長などの個体差により異なる為、ユニークなものになります。
とは言え、一定の目安として、飽和脂肪酸(Saturated fatty acid)、一価不飽和脂肪酸(Monounsaturated fatty acid)、多価不飽和脂肪酸(Poly un-saturated fatty acid)の摂取量比率(SMP比と呼ばれている)3:4:3が参考にされることが多く見られます。
しかしながら現在では、この比率の他に、生活習慣病が増加している昨今を危惧し、厚生労働省より、日本人の食事摂取基準が提示されています。
生活習慣病の発症リスクの目安として、脂質全体と飽和脂肪酸には、1日の摂取量の目標量が定められ、必須脂肪酸(体内で合成できない脂肪酸)であるn-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸には、1日の摂取量の目安量が定められています。
以下の表2は、厚生労働省が公表した「日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要」の中の「7.策定した食事摂取基準」に示された数値を基に、1日当たりの脂質摂取量の目標値・目安値を独自にg単位でまとめてみたものです。
表2.【1日当たりの脂質摂取量の目標値・目安値一覧表】
目標量とは、“生活習慣病の予防を目的に、「生活習慣病の予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量」”8)として定められた値です。
また、目安量とは、“一定の栄養状態を維持するのに十分な量”9)として定められた値です。
8),9)引用元: 「日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要」の 4.策定の基本的事項 1)指標
1日の各脂肪酸の摂取について国の考え方は、以下の通りです。
必須脂肪酸であるn-3系及びn-6系の多価不飽和脂肪酸の目安値を採り、飽和脂肪酸の過剰摂取を防ぐため目標量以下の摂取を心がける。
残りの脂肪酸摂取は、総脂質の目標量を考慮した量をn-9系で採るということです。
この脂質に関する策定の経緯は、厚生労働省サイトより公開されていますのでご興味のある方は、ご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042631.pdf
それでは、実際にn-3系、n-6系の脂肪酸を含む食用油はどのようなものがあるか見て見ましょう。
代表的な油脂品目の脂肪酸構成
以下のグラフは、各食用油において、どのような脂肪酸種がどれくらいの割合で入っているのか? アメリカ農務省のFood Composition Databasesのデータを基に、代表的油脂19品目について独自にグラフを作成してみました。
【グラフ1】
(グラフ中の数字の単位は、%で、各品目中の全脂肪中において各脂肪酸種が占める割合を表す)
代表的な油脂品目の主な脂肪酸
さらに、参考として上記グラフと同様にアメリカ農務省のFood Composition Databasesのデータを基に、代表的な脂肪酸が含まれる割合をグラフにしました。
飽和脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸の4種類をピックアップし、一価不飽和脂肪酸(ω9)は、オレイン酸、多価不飽和脂肪酸(ω6)は、リノール酸、エイコサジエン酸※4、多価不飽和脂肪酸(ω3)は、α-リノレン酸の8つを代表選定しました。
(※4 今回の対象油脂19品目中、菜種油のみに存在)
今回、調査対象とした脂肪酸は、27種あり、代表選定した8種を除いた19種の脂肪酸については、含有量が少ないため「その他」の名目としました。
参考)【グラフ2】
(グラフ中の数字の単位は、%で、各品目中の全脂肪中において各脂肪酸が占める割合を表す)
グラフ1からn-3系(ω3)の脂肪酸が多い油は、ダントツで亜麻仁油ですね。
その他は、亜麻仁油と比較してグンと下がりますが、キャノーラ油、大豆油、コーン油といったものが見られます。
今回は、扱っていませんが「えごま油」も亜麻仁油と同じくらいのn-3系脂肪酸が入っています。
次にn-6系(ω6)の脂肪酸が多い油は、グレープシード油ですね。
その他は、綿実油、大豆油、ごま油と続きますが、ほとんどの油に1割以上は入っています。
子どものための油は、どれが良いのか?
私たちは、油とひとことに言っても、様々な種類の脂肪酸をバランスよくとることが体にとって必要です。
今回、子どものための油脂を選定するにあたって考慮する点は、この先長い期間にわたって子どもに与えるという点を配慮し、遺伝子組み換え食品の可否や抽出法で造られた油リスク、工業的に造られたトランス脂肪酸など、危険性が未知なグレーゾーンの油脂は、選択から除外することにしました。
n-3系脂肪酸
まず、n-3系脂肪酸は、油食品として採る場合は、コールドプレス(低温圧搾)で造られた「亜麻仁油」若しくは「えごま油」が良いでしょう。
キャノーラ油、大豆油、コーン油については、国産原料を使ったコールドプレスのものであれば良いと思います。
その理由は、油の製造工程で溶剤を使う「抽出法」が採用されている商品は、先に述べたヒドロキシノネナールの問題やノルマルヘキサンの問題がグレーゾーンだからです。
また、キャノーラ油、大豆油、コーン油の原材料で国産の表記が無いものについては、材料が遺伝子組み換え食品であることが懸念されるためです。
摂取の仕方としては、n-3系脂肪酸は、酸化に弱く、加熱料理にも弱い性質を持っているので、油は1回使用分を個装されたものも売っていますので、そのような商品を使用し、サラダのドレッシング等生食で採ることをお奨めします。
サラダのドレッシングを食べる習慣のない方には、油製品を意識して摂取するのではなく、くるみや青魚、まぐろ(トロ)注意)にもn-3系脂肪酸が含まれているので、そちらから採ることが現実的かもわかりません。
注意)まぐろ(トロ)や、深海魚には重金属類が含まれるため、妊婦さんは控えるようにと妻の妊娠時期に病院のお医者さんから言われましたので、妊婦さんは採らないことをお奨めします。
我が家の息子は、野菜は無農薬の野菜であれば何も付けずにそのまま食べます。
なので、ドレッシングは食べません。
その代わり、焼き肉を食べる時は、息子にとってタレが必須アイテムなのでその時は、亜麻仁油を使っています。
もちろん、亜麻仁油だけではなく、醤油、砂糖、みりん、ニンニク、リンゴの擦りおろし、ゴマなんかを入れて自家製たれを作ります。
可能であれば、亜麻仁油かえごま油のドレッシング入りサラダを採る、若しくは、青魚料理、刺身など魚を食べる、おやつにヨーグルトにくるみを入れて食べる等を同じメニューが続かないようにバランスよく食べるのが良いと思うのですが、子どもの嗜好に合わせて工夫が必要ですね。
我が家では、焼きサバや焼きサケの身をほぐして、いりゴマと一緒にご飯に混ぜておにぎりにして子どもに出しています。
2歳半の時は魚臭いと言って食べつけなかったのですが、3歳9ヶ月になった今では、私が美味しそうに食べると喜んで一緒に食べてくれます。
息子の場合、年齢とともに食べ物の嗜好も変わってくるようです。
n-6系脂肪酸
現在の調理済み食品で販売されている商品には、n-6系脂肪酸が多く含まれています。そのため一般的には、国が推奨している摂取量の目安値を気にするよりも、過剰摂取になっていないか? という点に注意が必要だと思います。
先に示したグラフ1を見ても、ほとんどの油にn-6系脂肪酸が入っていますよね。
n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸の健康人の摂取量比は、おおよそ4:1が理想と言われていましたが、これは、 「健 康 栄 養情 報研 究会 編(1999)第6次 改定 日本人 の栄養所要量 食 事 取策 定基準 」で厚生労働省が言及したものであり、現在では、同省が比率ではなく、1日の摂取量(g)として既に紹介しました表2の数値を推奨しています。
写真は、プリンの市販品の例ですが、食品の内容表示に「植物油脂」と記載されていますよね。
この場合、ほとんどがパーム油です。
パーム油は、植物由来ですが飽和脂肪酸とn-6系脂肪酸を含んだ油脂油脂です。
そのため、我が家では、市販のプリンの場合、「植物油脂」の表記が無いものを購入して息子に食べさせています。
このように、加工食品の中に含まれる油脂は、実際には「植物油」若しくは「植物油脂」としか表記されないので、その油脂の中身まではメーカーに問い合わせて回答を得られない限りわかりません。
そのため、商品選択時にこれらが含まれているかどうかをしっかり見極めることと、できれば子どもには「植物油」若しくは「植物油脂」の表記が含まれないない商品をなるべく選択するということをお奨めします。
その理由は、n-3系以外の脂肪酸の過剰摂取を防ぐことはもちろんですが、使用されている油脂は、先にも述べました原材料が遺伝子組み換え食品の原材料であるリスク、油脂が「抽出法」で造られたリスクを排除するためです。
加熱調理に合った油脂
酸化に強く、加熱調理に適した油脂は、飽和脂肪酸です。
私の子どもの頃は、肉屋のコロッケと言えば、ラードで揚げたコロッケでした。
今は、肉屋やスーパーの総菜で何の油を使っているかを聞いて回ったところ、サラダ油という回答が多かったです。
理由は、出来上がりの味が油っぽくないからだそうです。
しかしながら、毎日の子どもの食事には、油を使う機会が多いですよね。
毎日、飽和脂肪酸を含む油脂で調理をすると、1日の摂取脂質量を国の推奨する量に抑えた場合、各脂肪酸との摂取量バランスが崩れやすくなります。
そのため、我が家では、子ども用には、酸化や加熱に比較的強いオリーブ油(エキストラバージンオイル)と国産のコールドプレスのごま油を使用しています。
エキストラバージンオイルは、一流の料理人でも生食用に使用するのが常識のように扱われることがあるそうですが、揚げ物にも適していると山中油店の方からお聞きして以来、山中油店の方がイタリアの生産現地まで出向いて品質をじっくり見定めたものを購入して使用しています。
ごま油も、同店の商品で「玉締め圧搾」という昔ながらのコールドプレスで造られる油です。
大人だけのおかずを作る場合は、国産のこめ油を使う場合もあります。
国産こめ油は、コールドプレスと表記されていないのでおそらく「圧抽法」で造られていると思いますので大人だけにしてます。
せっかくの良い油も保存方法を守らなければだいなしになる?
油の賞味期限は、製造元出荷から1年から長いもので1年半のものがほとんどです。
その理由は、油が変敗に至るまでの反応変化は、常温保管下では極めて緩やかなためです。
しかし、保管方法を一歩間違えるとせっかくの良い油が、自動酸化(油の劣化)が進み品質の良くない油に知らず知らずのうちに変わってしまいます。
その根拠の一例として、以下のグラフ3を挙げます。
このグラフは、主要な油の保管環境別に見た過酸化物価(PV)の変化を示したグラフです。
このことからも、このグラフからは、油の酸化が進む経時変化を見ることができます。
【グラフ3】
出典:(社)日本調理科学会
調理科学vol.9 No1(1976) 「市販油食品の変敗について」p.42
注)この実験に使用された油は、すべて保管中に空気に触れないように瓶詰されたものを使用しているので、酸化要因は、紫外線と温度変化のみです。
このグラフの中で、保管状態が「冷温暗所」及び「冷蔵庫」のグラフは、どの油でも過酸化物価は、実験最大日数180日においてPVが50以下を示しています。
一方、室内で日光に当たる場所では、どの油もPVが50を大きく上回っています。
この実験結果からもわかるように、未開栓の油でも保管方法を誤ると質の良くない油へと変わってしまうのです。
食用油は、常温暗所に保管する!
食用油は、日光だけでなく蛍光灯の光でも酸化が進むので、とにかく暗い所に保管するほうが良いです。
温度的には、常温(15℃~25℃)又は油が固まらない程度の冷所に保管することも重要です。
暗いところの保管スペースが無い場合は、容器の周囲全体にアルミ箔を巻いて保管するのも良いと思います。
例えば、ポテトッチプスの袋の内側は、アルミになってますよね。
これも、油の酸化を防ぐ対策の一つです。
したがって、自動酸化については、生産者が提示している油の保存方法(常温暗所保管)をきちんと守った場合に、賞味期限が適用されるということでしょう。
また、生産者が提示している保存方法を行っていた場合、油の場合は、消費期限ではなく賞味期限なので、その期限が過ぎた場合は、すぐに使用ができなくなるといったことはないそうです。
外食やコンビニ、スーパーの出来合いおかずに代表される総菜の場合はどうする?
それでは外食やコンビニ、スーパーの出来合いおかずに代表される総菜はどうでしょうか?
特に揚げ物は、高級料亭などでもない限り、フライヤーと呼ばれる大きな油曹で一度に多くの揚げ物を作ります。
当然、先のコラムで紹介した国からの通知に準拠した製造方法で作られているとは思います。
実際、私がいつも利用するスーパーや肉屋で揚げ物総菜に使っている油の交換頻度を聞いてみたところ、どの店舗も国からの通知内容以上の品質で作られていました。
しかしながら、外食やコンビニ、スーパーの出来合いおかずには、コスパを考え「抽出法」で製造された油脂が利用される場合がほとんどです。
また、お肉屋さんの揚げ物で使用するフライヤーの油も連続して1時間以上使われることも多く見られることから、子どもに食べてもらう揚げ物は、できるだけ家庭で作ったものを推奨します。
画像:いらすとや
良くない油を採らないための即席めん対応とは?
忙しい毎日に、カップ麺や袋めんは、手軽にできて腹持ちも良く、小学生の男の子などにも人気があるのではないでしょうか?
しかし、このインスタント麺は、油で揚げてあるものが多いので、たっぷり油が入っています。
そのまま食べると当然、油分も一緒に採ることになります。
ここで、インスタント麺がどうしても食べたい時にどうするか?
それは、ノンフライ麺で造られたものを選ぶということです。
ノンフライ麺以外の即席麺は、高温の油で揚げて固めますが、ノンフライ麺は温風乾燥して麺を固めるため油は使われてません。
また、袋麺に限定されますが、調理する時に麺をゆがいたお湯は全て捨て、別にお湯でスープを作ったものの中に、ゆがいた麺を入れるという作り方にすると、麺の中に含まれる70%程度の油は、湯がいたお湯と一緒に捨てられるのでお奨めです。
私の小学生時代に週に2回ほど即席ラーメンが好きで、母親に作ってもらっていましたが、この時母親がやっていた方法です。
家庭での食用油の再利用は止める
揚げ物をした後の油が、あまり汚れていない時に、もったいないので揚げカスをキッチンペーパーで越しながら、オイルポットなどに保管していないでしょうか?
私は、子どもの頃に母親が揚げ物をしてくれた後は、必ず残油を揚げカスを取り除いた状態でオイルポットに移し、再利用しているのを見て育ちました。
そのため、我が家でも揚げ物の残油は、あまり汚れていない場合は、何の躊躇もなく再利用していました。
しかしながら、油を加熱すると酸化は進みます。
下のほうにある写真は、新しいコメ油を使ってトンカツを10枚揚げた後の写真です。
油の色は、かろうじて透明ですが、油面の縁にカニ泡と呼ばれる泡が付着し、酸化が進んでいるのがわかります。
今回のように新品の油を使った場合の残油は、だいたい3、4回程度までなら使えると油メーカーさんは言っています10)が、我が家では、環境にエコではないかもわかりませんが、子どものことを考えると毎日揚げ物ばかりしているわけでもないので、油も食材と割り切って1回使ったら、きっぱり捨てています。
10)日清オイリオ,https://sodan.nisshin-oillio.com/pdf/part4.pdf
まとめ
食用油脂の安全性については、現在でも様々な研究結果が公表されています。
しかし、その研究結果もマウスの実験結果の段階であったり、遺伝子組み換え食品の影響など相関性が見られても因果関係までは、証明されていないというグレーゾーンが非常に多いと思います。
正直、私のような50代の人間には、グレーゾーンのものでも、そう神経質になる必要はないのではないかと思っています。
しかし、この先長い時間を生きる子どもに対しては、そうはいきません。
親としては、グレーゾーンでも、できうる限り避けたいと思うのは当然だと思います。
そのような思いで、今回、油脂について調べた中で、油脂は最適なものの種類選定も重要ですが、油の作られ方や保管方法、使い方といった面で、その品質が大きく変わることがわかりました。
現代の日本人の食生活は、油の摂取量で気にしないといけないのは、n-3系の油だけであり、その他の油脂は、油脂の摂取バランスと過剰摂取に注意するという時代になりました。
幸いにして和食文化を持つ日本人は、n-3系の油を多く含む魚類の油脂を欧米に比べて採りやすいため、油脂摂取について理想的な生活をおくることができる生地を持っていると思います。
子どもにとって美味しい和食を工夫し、時には親子そろって料理を作ることが、子どもの食欲増進に繋がり、将来的な健康増進にもつながると思います。
また、子どもの大好きな肉料理や揚げ物に関しても、油脂に対する正しい知識を持って対応すれば、子どもの発育に大きな力となると思います。
この記事が、その一助となれば幸いです。
最後に、今回の記事作成に当たっては、山中油店をはじめ、スーパーやお肉屋さんの現場の方から貴重な情報をいただきました。
この場を借りて、すべての関係者に謝意を表します。